【ピアニスト】2001年フランス映画 心の音がテクニックより優ったせいか、、、

Drama.ドラマ
タイトルや宣伝ポスターからはピアニストの恋愛と悲哀を描いた映画だろうと想像する。
もし初デートや家族で鑑賞した人がいたら気まずい思いをしたのではないか。
『乱れた旋律』とでも改題したくなるストーリー
有名ピアニストになる夢を娘に託しピアノ以外のことを全て制限し今も行動から荷物や通帳まで細かくチェックする母。
重圧の中で頑張ってきたのだろうがそこそこ以上の期待には答えられなかった娘は39歳のピアノ教師のエリカ(イザベル・ユペール)
ある日若い学生のワルターと出会い、一目惚れした彼の猛烈なアプローチが始まる。
エリカは初対面のワルターにアドルノの著書でシューマンの身近な問題についての『幻想小曲集論』を語る。
 「自らの狂気に走り最期の一瞬の正気にしがみつく。完全なる狂気に至る直前の自信喪失」
このことばの意味がわからなかったのだが、あとになってエリカ自身を表現していたこのストーリーの結末だったと感じた。
またエリカはシューベルトとシューマンについては「すべて知っている」と返答し、「父が精神疾患で入院中」と続けている。
偉人の人生を自分に見立てた一種の風変わりな自己紹介で、精神疾患の遺伝を予期しているようでもある。 
エリカの驚くべき性癖やSM的願望、自傷行為は自己抑制を強いられた環境に置かれた統合失調の症状のようだ。
レッスン中に男子責めることばも自分に向けているようだ。
教え子のアンナを傷つけるえげつない行為も嫉妬のようにも映るが実はアンナ親子を母と自分に重ね自分を傷つけているのではないか。
この映画より3~4年前に起こった女性の事件を思い出した。
最もピアニストの原作の方が先のようだが、1997年に東電の女性室長が殺された事件が起こった。
被害者の女性はK大出のエリートで仕事は早く適格でミスが無い。
仕事を定時に終えたあとは娼婦として夜の街に立つ。
道端で放尿したりラブホテルのベッドをトイレがわりにして出入り禁止になったりなど当時多くの奇行記事を目にした。
拒食症とみられる骨に皮がついたような痩せ細った体に学生時代の父の死や母と妹を支える一家の主人的な役や母からの愛情の欠損の重圧がのしかかった人生だったように記憶している
事件の女性は不幸にも39歳で命を落としているが
同じ39歳のアンナ、人生の折り返し年齢辺りと考えると、自らの狂気に走り最期の一瞬の正気にしがみつき決別した結末の先は、新たなる幸福へ道が用意されているに違いないと願う。
 
エリカの心の変化はセリフより化粧や髪型、服装で追っていくとわかりやすい。
エリカがピアニストとして大成できなかった原因は心が醸し出す音色にあったかもしれない。
ピアノや挿入曲はなくただ車道の騒音だけが響き幕が下りる。
ミヒャエル・ハネケ監督のカンヌ国際映画祭グランプリ受賞だけあってハードだがメッセージ性もあり深い内容だった。
 ただ同監督の『愛、アムール』(イザベル・ユペールも出演)同様、楽しめる映画ではなく、闇が心に刺さるので個人的には再び観たいとは思えない。
イザベル・ユペールは作品ごとに七変化するようなどんな役でも演じてしまうナチュラル感のある女優さん、このアンナ役も素晴らしかった。
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