【上海の伯爵夫人】 2005年英米独中国合作映画 カズオ イシグロ脚本

Drama.ドラマ
《 1936年上海 亡命した貴族》
薄汚れた下町、狭いアパートの2階に場に合わない上品な雰囲気を持つ亡命してきたロシア人貴族一族が住んでいた。
夫を亡くした伯爵夫人ソフィア(ナターシャ・リチャードソン)、娘のカティア、夫の姉グルシェンカ、義母との義母姉夫婦をタクシーダンスホールのホステスをしながらひとりで養っていた。
ソフィア以外は貴族の誇りからか働く気はさらさら無い。
それどころか仕事のため濃い化粧をして出かけるソフィアを罵る。
義姉グルシェンカは、時代が変わったとわかってはいるが自らは働かない。
ある日ソフィアは仕事場で、元外交官で盲目ジャクソン(レイフ・ファインズ)が狙われていると察し助けたことから信頼を得るようになる。
ジャクソンの夢は新しい形のクラブを経営すること、1年後ソフィアはTHE WHITE COUNTESS(白い伯爵夫人)で働き始めた。
日本人の松田(真田広之)はジャクソンと親密になりクラブの繁栄に力を貸すのだが真の目的は別にあった。
ソフィアを罵倒し、生活費を稼がせたうえ、300ドルの香港への脱出費用を工面させながら平気で裏切るプライドの高い一族の醜さと、同じアパートの1階に住むユダヤ人サミュエルの優しさや前向きな生き方が対照的。
広場でユダヤ人と罵倒されているサミュエルが、ジャクソンに、「ボロのバイクに乗るので耳が遠くて何も聞こえません、過酷な旅をしてここにきた苦労に比べたらなんでもない」と笑って言う。
短い言葉の裏にはサミュエルに長い苦労があった過去とそれを超越している今を語っている。
他人が見たら辛いいじめに感じることも、辛い過去を乗り越えた者にとっては平気なんだと思える前向きな考えや向ける笑顔は、見ていて気持ちがいいし見習いたいと思う。
そんなサミュエルだからソフィアの辛さは痛いほどわかる。
苦労続きのソフィアだが、その後の未来は、、、、、、、、、、、
日中戦争頃の上海の下町やダンスホール、クラブ、脱出を図る人々や船が実によく再現されている。
特に終盤とラストシーンが印象的だった。
《カズオ・イシグロ》
2017年ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの原作映画はどれも涙をそそらない(心で泣くような)悲劇的な要素を含む作品だと感じる。
女優のキャリー・マリガンのファンでイシグロ作品とは知らず鑑賞した映画『わたしを離さないで』
ジェームズ・アイヴォリー監督作品『モーリス』(感想記事有り)・『ハワーズ・エンド』(感想記事有り)・『日の名残り』(カズオ・イシグロ原作)・『上海の伯爵夫人』(カズオ・イシグロの脚本)
どれもイギリス文学が生んだ哀愁のあるストーリー。
特に秋やゆとりのある夜にひとりでじっくり味わうのが似合う映画。
ジェームズ・アイヴォリー監督イギリスの上流階級(または上流中産階級、資産家)など裕福な身分を取り上げている作品が多く、その人物や背景描写が大変素晴らしい。
ソフィアはロシア貴族だが、貧しい服装でも教養や美しい発声や身のこなしから上流階級出身であることが伝わる。
魅力的な演技でこれからますます磨きがかかるような女優さんでしたが、この映画公開の4年後にスキー事故で他界されてしまい大変残念です。
《撮影の魔術師》
撮影は独特の色彩と映像美を表現するクリストファードイル(Christopher Doyle、中国名・杜可風)
「ブエノスアイレス」「花様年華」などウォン・カーウァイ作品の撮影でも有名な監督。
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