【扉をたたく人】2008年アメリカ映画 心の扉は開いたが移民問題は閉ざされた The Visitor

AMERICAN

《ネタバレ含みます》
コネティカットの初老の大学教授のウォルター(リチャード・ジェンキンス)はピアニストだった妻を亡くし、無気力に近い日々を過ごしていた。
本を書いて忙しいことを理由に講義を1コマにし、ただ多忙なフリをしているだけだ。
妻の残したピアノでレッスンを受けるも、教え方が悪いかのようにピアノ教師を4人も交代している。
自分の生徒が論文の提出期限の遅れたときも理由も聞こうとせず受け取りを拒否、冷酷なイメージもある。
20年変わらぬ授業、名義だけ貸して共作扱いにした論文。
ニューヨークの学会発表会も勿論出席を拒んだが、真の著者シェリーの出産が近く仕方なくに出かけることになる。テーマは発展途上国の経済についてだ。
ウォルターはニューヨークに25年前に購入した別宅アパートを訪れたのだがそこにはタレクとゼイナブが生活していた。
シャンべを演奏しているシリア人のタレク(ハーズ・スレイマン)と出会ってまだ日の浅いセネガル出身のゼイナブ(ダナイ・グリラ)。
騙されて借りていたことがわかり直ぐに立ち退こうとしたふたりにウォルターは、ルームシェアを申し出る。
ウォルターはロンドンに息子がいるらしいが、絡むシーンは全く出てこないので疎遠になっているのではないか。
他人に冷たいウォルターにも息子の姿が重なったのかもしれない。

学会の会場近くで、バケツをバチを叩いている若者の姿を心地よく感じている様子。
ウォルターはクラシック好きだが、ピアノを弾くより、頭で考えずに感覚で叩く楽器に興味を示す。
タレクの指導でシャンべを覚え、セントラルパークでも演奏した。
帰り地下鉄で二人分電車代を払おうとしたタルクなのだが無賃乗車を疑われ逮捕された。
911事件後の取り締まり強化で大きなシャンべと顔立ちのせいで別件で疑われたのかもしれないが、事実彼は不法滞在扱いになっていた。
タレクは明るくて礼儀正しいな好青年だったが、拘留所では別人のようになっていく。
先の見えない恐怖、早く自由が欲しいと言った。

釈放させようと手を尽くすウォルターと心配でミシガンからやってきたタルクの母モーナ(ヒアム・アッバス)。
ウォルターはゼイナブを紹介し遠目に見たモーナは、彼女の色が黒すぎると露骨に批判した。
第一印象はアメリカに移住したのだから白人の彼女を持つべきと考える彼女の中の人種差別か、または姑根性か、、ゼイナブの人柄の良さに二人は次第に打ち解けていくが、ゼイナブも不法滞在者なのである。

《何の罪もないタレク、ウォルターとモーナが引き起こしてしまった責任の重さ》
目の前で逮捕され救えなかった責任を感じているウォルター。
ミシガンで職に就きタレクを学校に入れ普通に生活できていたので大丈夫だろうと送還の出頭命令書を内緒で捨ててしまっていた母のモーナ。几帳面そうであるが、アラブ時間的な大まかな国民性感情があったのか。

《ウォルターは情熱を取り戻した》
モーナの魅力に気づきそれは愛情へと変化、洒落たメガネに代え大学を休職してニューヨークに滞在を決めた。
弁護士を雇う費用などにあてるためか妻の残したピアノまで売ったのだが、、、、、

予告画像(字幕)

2001年9月11日にアメリカ合衆国内で起きた911同時多発テロ以降のアラブ系やイスラム教徒へのバッシングが強まっている。
『グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~』では2001年前後の 南スーダンからのロストボーイズ移民3人と職業紹介所の女性との交流を描いた実話で当時の困難な様子が伺える。
またこの『扉をたたく人』公開の年2008年にオバマが大統領選で移民制度の改革を掲げ当選しているが実際に可決されたのは2013年なので移民にとっては厳しい社会であった。
ウォルターの雇った弁護士も自身の叔父が23年滞在したのち送還されたと話していた。

《ウォルターはキレた、叫んだ。そしてシャンべを叩いた、、、》
「こんな風に扱っていいのか、あんな善良な人間を、こんなの間違っている。我々はなんて無力なんだ、人の人生なんだ」
モーナは送還されたタレクを追い、ぼやけていくアメリカ国旗とともにフェードアウトした。

《感想》
ウォルターは経済学の教授なのだから、知人を頼ったり他にタレクを救うつては無かったのだろか。
家が2カ所にあり経済的に困ってはいないのだから引き止められなかった次の行動は追いかけて行く情熱も選択もあると思う。これでお別れとは考えたくないです。
アメリカから一度強制送還されると10年は入国が許させないそうです。
タレクは、ゼイナブとの再開は難しいかもしれないがまだ若いし、拘留所よりは国で演奏したり生きる自由が得られた。
今は辛いだろうが社会も変化してくるのでまたいつかきっと才能を生かす場所とチャンスは訪れる。
個人的には違う結末を望みますが、移民と関わる人々の辛さが伝わる奥の深い内容で、映画としては素晴らしい作品でした。

映画賞多数受賞作品 監督はトム・マッカーシー

★★911事件後のアメリカ移民がテーマの映画
『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』
『グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~』

[amazonjs asin=”B002QBT2UK” locale=”JP” tmpl=”Small” title=”扉をたたく人 DVD”]

ピックアップ記事