【ダゲレオタイプの女】2016年フランスベルギー日本合作黒沢清監督映画・感性を研ぎ澄ます La Femme de la plaque argentiq

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ダゲレオタイプ1839年にルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが発明発表した写真技法で銀板、金、そして水銀、ヨウ素など危険薬品も使用し、完成まで非常に長い時間と手間がかかる。
複製が不可能なうえ解像度が高く繊細で鏡のような輝きと美しさ、吸い込まれそうな魔力もある。
被写体が人間であれば、モデルの方も長い時間身動きができない苦痛を伴う。
写真というよりは、まるで絵画や作品を制作するアーティストの芸術品のようである。
《前半のあらすじ》
パリ郊外、土地開発が進みあちこちに工事現場のフェンスが立てかけられている。
路地に入るとの大きな古城のような屋敷がそびえ立つ。
そこに住むのは写真家のステファン(オリヴィエ・グルメ)と娘マリー(コンスタンス・ルソー)。
かつてファッション雑誌のカメラマンなどをしていたステファンはダゲレオタイプの写真技法に魅了されてから妻ドゥーニーズ(ヴァレリ・シビラ)をモデルにその研究と制作を行っていた。
動かないよう長時間体に器具を装着固定し撮影に臨む苦痛からか神経を病みドゥーニーズは温室で首吊り自殺を遂げた。
ステファンは懲りることなく高い制作意欲から今度は娘のマリーをモデルに使い始めていた。
若い青年のジャン(タハール・ラヒム)は腰を痛めた年配のルイの代わりに助手として雇われた。
写真家の学生を候補から外したことで消去法により選ばれたようだが、それはステファンが弟子を取るつもりはなく、あくまでも助手として雑用をこなせる事を基準にしたと想像する。
マリーは父に従順であったものの本心は父のモデルをするよりも自立し外で働きたかった。
屋敷に隣接する横長の大きな温室で植物を愛し育てていたマリーは独学で学んだ知識が豊富にあった。
ジャンはトゥールーズの植物園から面接に来るよう手紙をもらったマリーを応援し、ふたりのあいだには愛情が芽生え始めていた。
パリからトゥールーズまでは700km弱あるようなので就職が決まればマリーは家を出ることになる。
同じ頃ジャンの友人の従弟トマ(マリク・ジディ)が土地開発でステファンの土地と屋敷を高額で売却させたがっていた。
だが土地売却を極端に拒むステファン。
そのころからステファンのもとには妻ドゥーニーズの亡霊が頻繁に現れるようになる。
一方、ジャンは気難しいステファンを説得し売却に応じさせれば自分に50万ユーロの手数料をもらえないかとトマに切り出し、その確約をさせた。
売却に成功し手数料が入ればマリーとの未来の生活を築けると考えた矢先、マリーは階段から転落し、意識を失ってしまった。だが、、、、
予告動画↑
公式サイト【ダゲレオタイプの女】www.bitters.co.jp/dagereo/
《感想》
当初『ヴィオレッタ』のような映画を想像していた。『ヴィオレッタ』感想記事有り 
母と娘の確執がテーマで写真家の母が娘をモデルとして使うのだが強要が異常なまでにエスカレートする現実的な映画。
だがストーリーが進むにつれヒッチコックの『レベッカ』の現代版ようなサスペンスや小川洋子原作フランス映画『薬指の標本』のようなミステリアスな ホラーのようにも感じた。 『薬指の標本』感想記事有り
そのうち妻の亡霊や幻覚に悩まされて現実と区別がつかなくなったステファンが何を起こすのかと思っていたが、中盤埃が舞い降りマリーが階段から転落したあたりから確執問題の映画やラブストーリーとは違う映画だと理解した。
暗さや恐怖感の少ない光の多い美しい西洋スタイルの怪談は、恨みや妬みから現れる幽霊ではなく自分の心が作り上げた幽霊のようでもあります。
マリーが階段から落ちた原因やなぜ車から消えたのか、本当に死はどの時点だったかステファンは自殺だったのか、、トマを殺したのはジャン自身なのか、筋弛緩剤はドゥーニーズやマリーの体にどれほどの影響をもたらしたのか、、疑問点や結末は鑑賞者がそれぞれに感じ判断されるのだと思います。
ジャンが自分の家にかくまったマリーが本当に生きているマリーなのか疑いつつも、父から解放してあげたい思いや、結婚し田舎で一緒に暮らしたい思いから生まれた虚像なのか。
ラストでジャンが「楽しい旅だった」と言っているのだから永遠にそばにいるのかもしれないし、全て理解した上でふっ切れたのかもしれない。
もしかすると悲劇のようでも全てのことが幻想の物語だったのかも、、、、、、
美しい映像美に酔い感性で楽しめる映画です。
《余談
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督映画に毎作出演するオリヴィエ・グルメ。
厳しい職人のイメージが強く、今回も存在感のあるダゲレオタイプのカメラマン役は少し引き締まった印象で熱演でした。
 ダルデンヌ兄弟監督作品感想記事有り→【午後8時の訪問者】
                   【イゴールの約束】
黒沢清監督・脚本の新作映画は『世界の果てまで(仮題)』2019年公開予定
ウズベキスタンのティムール帝国を舞台に「これまでのどの映画にも似ていない作品」になるそうです。
完成公開が待ち遠しいです。[amazonjs asin=”B06VWGCRXK” locale=”JP” tmpl=”Small” title=”ダゲレオタイプの女Blu-ray”]

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