【希望のかなた】2017年フィンランド映画・待望アキ・カウリスマキ監督6年ぶりの長編作Toivon tuolla puolen

Drama.ドラマ
『ル・アーヴルの靴みがき』に続く「難民3部作」(港町3部作)の第2弾
少ないセリフでそのセリフも棒読みのような硬さがある。
キャストも無表情でストップモーションが多用され馴染みのキャスト参加で繰り広げるアキ・カウリスマキワールド。
2017年・ベルリン国際映画祭 銀熊賞(監督賞)、国際批評家連盟賞年間グランプリ 、ダブリン国際映画祭 ダブリン映画批評家協会賞、最優秀男優賞 ミュンヘン映画祭 平和のためのドイツ映画賞 ザ・ブリッジ監督賞 受賞
監督、脚本、制作・アキ・カウリスマキ    上映時間94分
 
あらすじ
シリアの内戦による空爆でアレッポの家と家族を失った青年カリード。
運良く外出していて無事であった妹と逃げる途中で逸れてしまったカリード(シェルワン・ハジ)はひとりフィンランドのヘルシンキに流れ着いた。
難民申請の収容施設で親しくなったイラク人マズダックは申請が通ったのだがカリードは却下され送還を命じられた。
カリードは妹を探し出したい一心で施設から逃走した。
ビクストロムに出会い助けられたカリードは彼のレストランで働き身分証も偽造してもらい、当面の住まいに倉庫を提供された。

一方ビクストロムは飲んだくれの妻に別れを告げ、卸業のシャツの在庫を処分し、そのお金を持ってカジノへ出かける。

ポーカーで勝ち続け大金を手にしたビクストロムは仲介業者から店員付きのレストラン『ゴールデン・パイント』を格安で手に入れた。そこに転がり込んできたのがカリードだった。

だが店員はやる気がなくまともな料理も出せず店の売り上げは落ち込むばかりだった。

発想の転換でスシ店にしようと日本料理(寿司)の本を買い占め店内を日本風に改装し、見よう見まねで寿司を作ったのだが、シャリより多いわさびの寿司は不評だった。

次に生バンド演奏を入れたダンスホールに改装したところ今度はなんとか落ち着いた。

店員たちがビクストロムと協力し合うことでやる気も仲間意識も芽生えた矢先、カリードの妹のミリアムの無事が確認された。
すぐに出国しミリアムのいるリトアニアの難民センターに向かおうとするカリードであったが、ビクストロムは別の方法を提案し、、、、
カリードは無事ミリアムと再会を果たし、、、
ビクストロムは妻とよりを戻し、、、
予告動画↑
オフィシャルサイト・https://www.shochiku.co.jp/dvd/kibou
 
 
難民が窮地に追いやられたときに手を差しのべる者がいる
映画のテーマとも思われる、難民に対する見方が良い方へ変化し理解を望むような出来事として、、、
カリードと妹が逃げる際、内戦で亡くなった婚約者の父が費用を工面してくれた。
船に隠れたカリードを船員が見逃してくれた。
フィンランドにやっとの思いで到着したカリードは自分も余分なお金がないはずなのに路上のミュージシャンにお金を施した。(のちに収容施設で別れの晩に伝統楽器サズを弾いていることから世界共通の音楽愛を感じる)
カリードがネオナチに襲われあわやの時にホームレスに助けられ、その後ビクストロムに雇われる。
ビクストロムの知人の運送業者は「素敵な荷物を運べたから』と無償でリカードの妹を救出しお礼を取らなかった。
ミリアムも良き人の助けにより無事に生き延びられたとセリフにある。
《赤の象徴
小津安二郎監督を敬愛し影響を受けていると感じる同じテーマ、同じキャストの登用や、小津作品の憧憬の象徴として「彼岸花」に赤いやかんを用いているように、本作品では朱赤のオブジェが所々にポイントに目につく。
それはキャストの服やネクタイや帽子、エプロンであったり、また赤ワインや壁や床やポスターであったりする。
特に目を引いたのは滑り出しで登場する酒に溺れた妻の赤い服髪に巻かれた赤いカーラーとテーブルに置かれた赤いマニキュア、、、また洋服の柄の黄緑がテーブルの上に置かれたサボテンやカーテン、壁の色と同系色を用い効果的な影を作っている。
そして廃業するために在庫処分した倉庫の棚に1枚だけ残されていた赤い洋服は、のちにリカードを住まわす時にもそのままである。鑑賞する側は気になるのだが気にも留めないそれは置き忘れた服ではなく倉庫内の背景に組み込まれた芸術作品の象徴になっている。
色のない寂しい画面にはさり気無く赤い消火器置かれている。
これらの赤が存在しない画面を想像してみるとこのポイントの赤がいかに効果的で画面の芸術性を挙げているかがよくわかるし、全てのカットの画面に色や配置のバランスを計算されていることが伺える。
特に印象的な赤い象徴モチーフの画像
アキ・カウリスマキ作品の常連役者
(サカリ・クオスマネン)レストラン経営のビクストロム ・出演作『過去のない男』
・(カティ・オウティネン)シャツお卸業廃業前のビクストロムの取引先の経営者 ・ほとんどの作品に出演されている女優
・(イルッカ・コイヴラ)ビクストロムが買い取ったレストランの雇われ支配人カラムニウス
      出演作『街のあかり』『ル・アーヴルの靴みがき』『バーテンダー』
・(ヤンネ・ヒューティアイネン)ビクストロムが買い取ったレストランのコック出演作『街のあかり』過去のない男』
・(マリヤ・ヤルヴェンヘルミ)収容施設の女・出演作『街のあかり』
・(カイヤ・パカリネン)ヴィクストロムの酔っ払いの妻役
今後の常連になりそうな期待の役者
・(ヌップ・コイブ)レストランのウエイトレス
・(シェルワン・ハジ)主人公のリカード
感想
毎回類似テーマ、同じキャストを多用するところはベルギーのダルデンヌ兄弟監督の作品にも言えますが、常連の役者さんが今作品はどこで、どんな役で登場するのかを期待する楽しみがあります。(ダルデンヌ兄弟監督感想記事あり『イゴールの約束』午後8時の訪問者』
稚拙な表現になりますが、小学生の作文が芝居になり、それが舞台で最小限のセリフで幕を上げているような感覚と同時にカメラアングルや構図、間の取り方は芸術家のこだわった作品という印象。
余分なものを極力排除しシンプルに淡々と進むストーリーは「繋ぎを鑑賞者自身に考えさせる」アキ・カウリスマキスタイルを守り続けています。
映像はワンカットワンカットの画像としても名画のように美しい。
前作の長編2011年『ル・アーヴルの靴みがき』からさらに2012年短編のオムニバス『ポルトガル、ここに誕生す~ギマランイス歴史地区』の中の1話『バーテンダー』そしてこの『希望のかなた』はその特徴がさらに露骨に表現されています。
難民問題がテーマですが、日本人から見たら滑稽とも感じる寿司店に改装したりと、深刻さを抑えたコミカルな表現も多いのも特徴で、監督の愛犬のヴァルプが「コイスティネン」という名前で登場したり(『街のあかり』の主人公の名)、カリードとミリアムの話し合いにインド料理店が使われていたりクスッと笑ってしまうようなユーモアも随所に隠れています。
『希望のかなた』のラストシーンは鑑賞者のそれぞれが感じる心の中にあるのかもしれませんが結末に犬のコイスティネン登場は劇中の流れから助けの手であると解釈します。
「カウリスマキ」は本名であり、まさに、神からの天与の賜物の「カリスマ」を含んでいるのだと感じます。
個人的にはアキ・カウリスマキ監督作品の中では『ル・アーヴルの靴みがき』が特にオススメです。
万人向けではないかもしれませんがどの作品も芸術品として高く評価しています。
余談

2011年敬愛する亡き小津安二郎監督に語りかけるアキ・カウリスマキ監督

Aki Kaurismaki on Ozu↓

アキ・カウリスマキ監督作品2003年の『過去の無い男』風に制作された2012年の・いいなCM earth music & ecology 宮崎あおい 「カフェにて」篇 もかなり再生回数アップに貢献してしまっているおすすめCMです。

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