【Mommy マミー】2014年カナダ映画・ADHD息子と向き合う母をカリスマグザヴィエ・ドラン監督の映像美で描いた珠玉の芸術

Drama.ドラマ
 上映時間139分  セリフ・フランス語
グザヴィエ・ドラン監督
役者であり監督である奇才グザヴィエ・ドラン氏、すば抜けた個性、常に新鮮で新しい発想と感性は天才的センスを持つ若き芸術家でもある。
画面の全てに監督のこだわりと息遣いを感じ鑑賞者を引き込んでいく。
細やかに人間の特徴をとらえ新鮮で、時に斬新な作風で社会の問題を訴えかけている。
その才能はどこまで伸びていくのだろうかと常に新作を期待してしまう。
《前半のあらすじ》
シングルマザーのダイアン(アンヌ・ドルヴァル)にはADHD(多動性障害)と行動障害を持つ15歳の少年スティーブ(アントワン=オリビエ・ピロン)がいた。
スティーブは施設に預けられていたが施設の食堂に放火し少年のひとりに怪我を負わせ強制退所を命じられたため引き取ってふたりで暮らし始めた。
万引きをしたり、すぐにキレて感情の起伏が激しく時には手に追えなくなるが、「世界で1番、ママが好き!」とネックレスをプレゼントしたりもする。
しばらくしてダイアンは向かいの家に住むカイラ(スザンヌ・クレマン)と親しくなる。
カイラはうまく喋ることができない障害のため教師の職から離れていて夫や娘とも心に溝ができていたのだが、ダイヤンの飾らない性格にカイラは次第に心を開くようになり笑顔を取り戻し始めた。
ある日ダイアンは急な不当とも言える解雇を受け、職探しのためスティーブをカイラに預けるのだった。
はじめは反抗していたスティーブだが、カイラの厳しくも優しい性格に愛情を感じ信頼をおき、素直に勉強を教えてもらうまでになった。
3人の絆が深まり幸せな未来が見えはじめた矢先、カイラのもとにスティーブの放火が原因で傷を負った少年の代理人から5万ドルの慰謝料の支払い請求書が届いた。
困ったダイアンは自分に気がある親切な弁護士ポール(パトリック・ユアール)に解決してもらおうとするのだが、、、、
↑「Mommy マミー」予告動画
《感想》
出だし、正方形のスクリーン画面サイズには驚きがありましたが次第に馴染みます。
まるでプライベートを覗き込むようなサイズに隠された意図がなんとなく理解できます。
ADHDの少年と苦悩の続く母の生き様が実にリアルで丁寧に真摯に向き合って表現されているドラマです。
家庭教師役のカイラ(スザンヌ・クレマン)は言葉が思うように出ない(吃音)がありますがその後天的な原因や家族と打ち解けられない理由があると匂わせ、鑑賞する側の「知りたい」欲望を裏切るように最後までその訳は打ち明けられない。
ですが、スティーブがカイラの部屋に入った時にカメラがパンしてその中に男の子らしき写真が混ざっていたことや教師であったことから勝手な想像ではありますが、カイラにはもうひとり息子がいて、なんらかのショッキングな事件が起こったのかと推測してしまう。
本音のことばをセリフで表現しないシーンが多いのもこの映画の特徴。
画像や仕草から伝わることを予測し省略する場面は他のグザヴィエ・ドラン作品にも多く見られます。
終盤、引越しが決まったことをカイラがダイアンに告げにいくシーンでの噛み合わない会話、引越しを喜び別れに対してダイアンのあまりにそっけない態度に深い友情を感じていたカイラは味気なく寂しい思いをしますが、実はダイアンの思いやり。
カイラが去ったあと、ひとりで大泣きしているダイアンに胸が締め付けられる思いでした。
このやりとりは最高に素晴らしいシーンです。
なんでもズカズカと言うように見えるダイアンですが不器用で愛情表現も下手。
常に相手のことを考え本当は愛情に溢れた女性なのだと感じました。
また辛い生き方を強いられてしまった女性ですが前向きな強さ「諦めなければ何かを変えられる」どんなことが起ころうと息子を愛して止まない親の愛を持っています。
どん底の中でもいつか幸せになると信じているし、きっと掴むと思わずにはいられない。
完結と言えない余韻を残している結末の先は鑑賞者自身が心の中で作り上げていく。
役者のアンヌ・ドルバルの演技が女優賞を受賞しても良いほどリアリティーがあり素晴らしかったのはもちろんですが、キャストの性格までで細やかに作り出し脚本を仕上げているグザヴィエ・ドランのカリスマ性にただただ驚きを隠せません。
スティーブがカイラの家で聞いていたエッフェル65(Eiffel 65) の名曲 Blue (Da Ba Dee)も懐かしいです。
2012年の『私はロランス』では芸術的で美しい画面の多様でですが抽象的表現が多くやや分かりにくい部分があり、翌年2013年の同性愛、暴力をテーマにした『トム・アット・ザ・ファーム』では、洗練されたシンプルな映像美と切迫感を半イメージ的にも表現、ゲイであるグザヴィエ・ドラン監督自ら主役を務め主人公目線で描いています。
続く本作品では映像美よりはストーリーがありカットの切り替えや画面構成のテクニックが加わり、分かりやすい芸術作品と言えそうです。
過去の映画と同じ役者の起用や、自らの出演、実の父親の出演と大きな模様替えのない役者を違う役柄で魅力的に描くのも特徴であり楽しさでもありこじんまりとしたシンプルな中にスケールの大きさが感じられる。
作中、愛情だけでは解決できないと言うセリフがありましたが、重いテーマであります。
楽しいストーリーではありませんので万人向き映画とは言えませんが、観る価値は大いにあります。
個人的には賞賛と続く作品への期待ありの素晴らしい芸術作品と評価します。
[amazonjs asin=”B014ITG354″ locale=”JP” tmpl=”Small” title=”Mommy/マミー Blu-ray”]
グザヴィエ・ドラン監督オススメ映画》
『トム・アット・ザ・ファーム 』Tom à la ferme (2013年)フランス映画 (上記文中にも説明あり) ★補足・映像の美しさや構図の良さや色合いに引き込まれます。同性愛や暴力を淡々と重く描いたドラマ。監督自身が主役で、父であり役者のマニュエル・タドロスがバーテンダー役として出演しているのも興味深い。また数々の映画で印象に残る曲を作曲しているガブリエル・ヤレドの挿入曲が素晴らしいく効果的で良さを更に引き立て盛り上げています。寒々としていますが感銘を受ける名作です。
[amazonjs asin=”B00T77LBAK” locale=”JP” tmpl=”Small” title=”トム・アット・ザ・ファーム Blu-ray”]
男性の同性愛(ゲイ)が主人公のグザヴィエ・ドラン監督5作品は以下に解説あり
『マイ・マザー』2009年カナダ映画(仏: J’ai tué ma mère, 英: I Killed My Mother)
『胸騒ぎの恋人 』2010年カナダ映画Les amours imaginaires 
『わたしはロランス』2012年カナダフランス合作映画 Laurence Anyways 
『トム・アット・ザ・ファーム 』2013年フランス映画Tom à la ferme ★
『たかが世界の終わり』2016年 カナダフランス合作映画Juste la fin du monde

ピックアップ記事

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。